ウェットフライで釣るときはこんな感じです。
バンブーロッドの片手竿を使っているのでフライは小さめ、6番から1番。流れに90度に15-20メートルキャストして、下流45度でフライとラインとロッドがまっすぐになるのを基本にします。なるべく毛針の斜め横を見せるようなスイングを心がけつつ、泳いで岸にたどり着く感じです。そしてその途中にスティールヘッドがグッとフライを押さえ込んでくる。そこに腰を入れて水面と平行に岸に向かって竿を曲げる。パシッと軽いハネるような合わせはダメで、ギュウッッッと竿の根元に重さを十分に乗せるように、針が魚の顎に練り込むようにする。フックセットは重要です。すぐに走り出せばとにかくラインを離してそのまま行かせますが、動かなければその腰の入ったままに魚の鼓動を確かめる。すぐに岸に上がってこちらの自由を確保したくなるのはわかりますが、そうせずにその場でがっちり掛けてやる。慌てない。そこからすぐに水面に飛び出てきても慌てない。基本竿先は低く保つ。竹竿でやっている限り目の高さ以上になることは少ないです。飛ばれる時はとにかくラインは離す。好きなようにさせる。水中に潜って止まったら、飛んで暴れて緩んだ糸を竿ですくうようにし、ゆっくりもう一度、しっかり張る。前半にこれだけ重さがかかれば針先は一旦通ったと思いたいところです。それでも外れたら、とても固いところに掛かっていたか、肉切れしたか、あるいは魚の針外しの動きが勝ったのです。
水中に頭を入れて水底に張り付き始めたらゆっくり岸に向かう。下流に走られても上流に走られても慌てずにゆっくり歩を進める。もし想定以上のスピードで走ったら喜んだほうがいい。見たことがないリールの逆転とその騒がしい音。最高です。50メートル以上出てしまったら、もし下流が許されれば歩いて追う。それ以上に伸ばされそうで次の瀬を降るとなると少し慌てて魚を追う。ラインがあまりに出てしまうとそれに受ける水の抵抗でラインが出ていくスピードが加速するし、底石に噛んでしまうことも考えられるからです。
走った後、どこかで必ず魚は止まります。もし寄せられるのなら巻き取ります。もしどっしり止まっていれば慌てずに、しばらくそのまま張り続ける。ラインが出すぎていれば巻き取りながらバッキングは回収し、フライラインの距離までは詰めたい。
後はこれらのミックスでくる。さらに飛ぶヤツ。さらに走るヤツ。そのまま動かないヤツ。それぞれの魚の個性のままに抵抗してきますが、暴れだしたらとにかくラインは放して出ていくままにする。そしてまた水中に頭が入ったらしっかりラインを張ってやる、の繰り返しです。取り込みを早めようとしないことです。最初にフックセットはできているはず。水中に頭が入って、特に上流に向かって泳ぐ態勢ならしっかりラインを張って圧力をかけ続けるのです。
10分かそれ以上、そうしているとようやく、抵抗のひねりというよりは疲れてボディがよれてくるのが水中に見えます。白い腹が見えるようになり、カラダが水面近くに上ってきます。沖に向かって泳いでも、握ったラインを引き出すほどにはならなくなってくる。そこでまたしばらく粘れれば、再び体をよじって白い腹が見えて浮いてくるようになってきます。これが取り込みのサインになります。頭がこちらに向きやすくなったり、下流に向かうようになれば一気に岸に向かって泳がせて取り込むときもあるし、おとなしく斜め上流に誘導してビーチに上げるときもあります。
もう一度繰り返します。
当たった後しっかりギュウッとフックセットをし、最初の抵抗に対抗しすぎないように自由にさせ、いなし、走りたいだけ走らせ、止まって向こうの一休みがある。竿は立てすぎず、しっかりラインを張って圧を加え、次の抵抗に対応できるようにこちらも態勢を整え、水面を激しく割って躍り出ようが、もう一度も二度も走られようが自由にさせて、また魚は休みに入る。これを繰り返していると最後に取り込みのサインが出てくるから、それまでは耐えなければいけないし、楽しまなければいけない。
20年経って、取り込みのタイミングをようやく図ることができてきた気がします。
こんなに凄い魚に触れることができて、その漲る生命を放し、砲弾が再び水の流れの中に消えてゆきます。野生の動物よろしく貴重そのものの存在。どう言葉で説明したらいいのやら。一度見てみればその魅力の塊を感じてもらえると思うのですが。