Kispiox River

森と魚。2つによってキスピオクスは紛れもない個性を示します。冗談抜きでキスピオクスでは黒熊が良く出没し、グリズリーも徘徊しています。そして冗談抜きにキスピオクスには凄い体格のスティールヘッドが帰ってきます。世界中のスティールヘッダーの間で、この川はバビーンとともに巨大スティールヘッドでは筆頭。そんな川で釣りをしようという人は猛獣の恐怖を感じつつ世界随一のスティールヘッドの可能性も感じつつの旅になるでしょう。

 

木々を縫って谷を流れる川の規模はなじみの大きさ。だから、川岸に降りて行けば、どこを釣ったらいいか、どこを釣らなくていいかは見当がつくと思います。見当が付かないのは魚の大きさです。スキーナの広大さで戦われたらどうなってしまうのかと想像してしまいます。

ですがキスピオクスならランディングできる可能性が出てきます。ただし、ひとたび運よく掛かったとしても、多くのエピソードにあるように何時間ものファイトになるようなことがあったら、いったいどんなことになってしまうのでしょうか。

キスピオクスバレーの一筋であるこの川は左右両岸に木が迫っているところがほとんどです。だから風に煽られることは少ないでしょう。

川の規模で言えば、大型の渓流という感じですが、日本の渓流とは違って急勾配を流れ下るというよりは、もっと重量感を伴う流れです。流れは両岸の森の栄養を巻き込んで深い緑を写し、そんな川に育つスティールヘッドはまさしく巨人クラスの風格になるものがいます。

与えられた地形の硬軟に従って左右に自然に蛇行し、しかも深みのある淵が点在します。魚達は上流を目指しつつそれぞれの淵を溜まり場にしていて、シーズン中はまずそういうところが釣り師の向かうべきところになります。

ヘーゼルトン上流の5つのスティールヘッドリバーSustut、Babine、Kispiox、Bulkley、Moriceの中にあって、KispioxとBulkleyは車でのアクセスが容易で、シーズン中は相当数の釣り人が押し寄せます。スキーナ本流と違い、スティールヘッドのプレミアムリバーとして知られるこれら5つの川でサーモン専攻の釣り人に会うことはまずありません。9、10月に出会う釣り人は、ほぼ100%スティールヘッドを目的としています。

アクセスの容易さでキスピオクスと同等にあるBulkleyは近年人気が増すばかりです。理由は遡上数、そして川の規模はスキーナのサイズダウンで、狙いがより絞られていて釣れる確率が高いからと言われます。

そんなBulkleyになぜ行かないのかと釣友Wallyに訊ねると、必ず答えは「魚が小さいから」ときます。キスピオクスの魅力は全く別。魚のアベレージが大きいことが明白なのです。

シーズン中、世界的に知られるキスピオクスのそれぞれのHole(釣場)には1日数人、必ず入ります。ラフトで釣り下る者も年々増えています。だから川全体に人為的プレッシャーは掛かり通しです。まず間違いなく魚は数回はフライを見たことがあるんじゃないかと想像していいでしょう。

上流に湖を持たないキスピオクスは降雨にとても敏感で、雨は即増水をもたらし、続けばすぐに流れに色が入ります。シーズン中数回は釣り人がうんざりするような川の状態になることが想像でき流くらいです。1週間の旅では運が必要になるかもしれません。

ただ、先に話したように、プレッシャーの高いキスピオクスでは、この荒れるときがスティールヘッドのマインドをリセットするとき。だから、チャンスが訪れるのは川が荒れた後。釣り人を近づけないような増水後、魚の気持ちが切り替わり、そして減水に向かうときが最大のチャンスになります。雨が止めばすぐにでも減水が始まるような敏感さです。よくよく森と対話し、川岸と流れを観察して、このときに竿を出せるようにしたいところです。


メリハリの効いた流れで釣り人はフライをどこに流そうかと迷うことは少ないはずです。比較的手前にいいポイントがあり、正直そんなにロングキャストを必要としないでしょう。かえってシングルハンドのほうが快適に釣りができる場所も結構あります。

もちろん、シンクティップのシステム抜きには考えられないし、#2前後からそれ以上の大き目のフライをきっちり投げられて、泳層をコントロールすることが優先されるため、竿にはそれなりの力が欲しいです。

そして相手にする魚は平均14、15lb、80-90cmのスティールヘッドである。そして25lb、あるいは30lbが単なる偶然でなく存在し、いつ自分のフライを追うもかわりません。水底にへばりつかれたら1時間かそれ以上のファイトも覚悟することになってくるかもしれません。だから、最低#8のロッド。


キスピオクスは他の川に比べ数の釣りが期待できることはまずありません。丸坊主で帰っていく釣り人も珍しくはないでしょう。それでもひっきりなしに釣人がやってきてはフライを投げているようなメジャーな川です。釣り人のプレッシャーがあることを前提に釣りをし、そんな場所だからこそ、キャストは確実に、ドリフトは丁寧に、集中力の釣りができないと結果がでないのです。

シングルハンドは手の内をきっちり探るのにはスペイロッドより適しています。これで流れに応じてティップを変えて毛鉤を流す深さをコントロールし、スティールヘッドが居着いている場所に送り込む丁寧な釣りがカギになるはずです。

      

ここ数年、見かける釣り人の多くがキスピオクスでもスペイロッドを使用しています。規模を考えると長い竿は大げさで、かえって制限を感じながら釣りをしているように見えるとこもあります。私も以前はスペイロッド一本槍でキスピオクスに来ていました。ですが、その時メインで使っていた14'や15'では手前の流れを釣るのに精細を欠いたのが実際です。

そこでシングルハンドに切り替えて、想像どおりの結果が出始めているのですが、後ろの木を釣るたびに、やっぱりスペイはどうなのかと考えてしまいます。また、いくらロングキャストを必要としないとは言っても、シングルハンドでのシンクティップのキャスティングは快適とは言いがたいのです。

シングルハンドで十分スティールヘッドを追いかけられるのだけれど、キスピオクスではオーバーヘッドキャストがしにくい場所も半分はあります。だから、ここで釣りをしていてスペイロッドのことを忘れることはないのです。

まだ試してはいないが、11-12'の短いロッドは選択肢に入れていいかもしれません。ひょっとしたら、この短めのスペイロッドこそハマる可能性があります。魚の大きさを考えれば短めのスペイでも#8の強さはほしいところじゃないでしょうか。

やっぱり流れの中にある深みを狙おうとするのが一番確率が高いでしょう。だからでしょうか、ティーニー200を使用する釣り人に会うことが数回ありました。実際にキスピオクスではこの200グレインがちょうどいい場所が多いと感じることがあります。けれどティーニー300や400がほしくなることはありますいません。ティーニーラインは先端9mのヘッドが全てシンキング部分です。300グレインではたちまち根掛かります。ここでもやっぱりチェンジャブルなシンクティップのシステムのほうがいいとしか思えないのです。

ベアホールという場所があります。非常に深みのある場所で、強烈な戦いを強いられたことがある場所です。ここでかけた2匹はいいずれも深みにフライを泳がせて、岸よりの駆け上がり付近で掛けています。ティップはタイプIVの12-15フィートだった。そしてベアホールの上流にある別のホールに移動すると、今度はフローティング+ロングリーダーにちょっとウェイトを仕込んだフライを結んで結果が出てきます。ともに狙いは底に近いほうに泳ぐことなのですが、ちょっと場所を移動すると、ラインを変えないことには地面を食うかあるいは全く魚にアピールしないことになりかねません。ご存知のように地形が一定でない川の流れに対応するのに、1種類のラインでは心もとないものです。だから、キスピオクスでもフローティングベースのティップシンクシステム。これです。

スキーナのようなグリースラインウォータが少なく、もっと変化がある流れ、渓流を想像してください。石の裏のポケットを狙わなければいけないかもしれないし、対岸の深み、エグレもあります。そして深みから次の瀬に向かうテールウォータもあります。ラインのフレキシビリティはここでも重要度満点。だからスペイロッド同様シングルハンドや短めのスペイロッドが活躍できます。

この変化に対応するのには、複数のティップが必要でしょう。タイプIVで複数(3種以上)の長さを用意したり、300グレイン、400グレイン、500グレインの9フィートくらいのショートティップがほしくなる場所もあります。もちろんヘッドで沈めるばかりでなく、フローティング+ロングリーダーも忘れてはいけません。

深みに落ち着く魚のバイトは本当に小さく、トンプソンに出てくる話のようなヒッタクリやスキーナで起こる突然の疾走などはほとんどないかもしれません。本当に小さい、“カツン“というアタリや、ただフライやラインの動きが止まっているのをアワセに行かなければならないことが多いのです。これはガイドのコメントにも出てきます。キスピオクスでは小さい当たりを“アワセる“ことが必要。だから丁寧に。集中して。