マイザー本人へのインタビュー

当サイトはスティールヘッド、サーモン、スペイと絞り込んだテーマを元にしていますが、日本にスティールヘッドはいないし、サーモンの代名詞であるアトランティックやパワフルなキングも釣れない。そんなスペイフィッシングが本当に楽しめる環境とは言い難い日本でオープンしているサイトだから、ここを訪れてこの文章を読むに至る人はほんのわずかと思います。けれど反対に、そのわずかな人は相当馬鹿になってこういう釣りを探求していることも想像できるワケです。

そんな人たちのためにマイザー氏は快く応じてくれて、自身の背景、デザインコンセプト、また日本の釣人にあらためてスペイフィッシングの幅広い楽しみについて話をしてくれました。スペイロッドの世界では、小さいけれど確かな存在になりつつあるマイザー氏にインタビューできたことは光栄なこと。以下お楽しみを。

 

釣りの自分史、そしてスペイフィッシングの始まり

私はかれこれ50年近くフライフィシングをしてきました。今年(2006)はちょうど59歳になりました。まだ幼かった頃、父、私、そして私の兄弟にとって、釣りは家族のリクリエーションというだけでなく、食卓に並べる食料の調達でもありました。実際大いに釣りを楽しみ、また食事も楽しんで、ディナーにはいつもたくさんのフレッシュな魚が並んだものですよ!これは世界中によくある風景だと思います。

父はフライフィッシャーではなく、兄弟も同じくそうではありませんでしたし、友達でもフライフィッシャーはほとんどいませんでした。当時は基本的に餌釣りで、湖にボートを出して釣りをすることが一般的でした。湖にはたくさんのゲームフィッシュが泳いでいたものでした。

スポーツとしてのフライフィシングは、私自身にとってとりわけ熱心に取り組んだ遊びでしたが、ベイトフィッシングが中心の家族の中では否定されずともなかなか理解されないものでした。

実際私の最初のフライロッドは10歳になってやっと父から与えられたものです。この竿は今も大切にしていて、オレゴンの山岳渓流でトラウトを釣るときはいまだにこの“オールドフレンド”を使ってますよ。

私がはじめてトゥーハンドロッドの美しいラインデリバリーに夢中になったのは、毎年ある季節に訪れる一人の釣人のキャスティングを見てからでした。

私と友人が初めてそれを観察することになったのはミシガン北部のスペリオール湖に流れ込むL'ance Riverのマウスでした。1978年の春のことです。

この釣人の手によるキャストは、まさに、本当に詩的なものを奏でていました。

・・・流れるようなプレゼンテーションでしかも効果的。到達する距離も驚くべきもので、全てがわずかばかりのエネルギーによって達成されてしまったのです。

私達と同じく、この釣人は河口周辺の浅場に産卵を控えて群れるベイトフィッシュを狙う大型トラウトを釣りに来ていました。

けれど私達の釣りとは違って、今まで見たことがないキャスティングパフォーマンスで、フライロッドのように見えるその竿は自分達の竿の2倍近くの長さがあり、私達のシングルハンドとは違って両手でキャストしていたのです。

言うまでもなく、自分達の目はこの釣人に釘付けになりました。その釣人のキャスティングは自分達よりはるか遠くまで到達し、伸びてゆきます。私達のコントロールの範囲よりはるか遠くまで釣りが及び、流麗で美しいまでにフライラインを扱っているのです。

数時間見惚れた後は、この釣人と知り合いになりたい気持ちを抑えられず、そしてこの素晴らしいフィッシングテクニックを身に付けようと決心していました。

彼はスコットランドのアングラーでした。アメリカに住んでいる親類を毎年尋ねてきていて、そのときいつもトゥーハンドロッドを持ってきて釣りしているとのことでした。

彼は物惜しみせずに、しかも我慢強いインストラクターとなって、私に「Art of the two handed rod」を教えてくれたのです・・・そしてそのアートを、私は今もマスターしようと追求し続けています。

 

北米のスペイフィッシングと最も影響を受けた人物

まず始めに言っておいていいと思いますが、北米において浸透してきたフライキャスティングの芸術はかれこれ200年に及びますが、フライ・アングラーとしての私達(そして日本も)はトゥ-ハンドロッドに関してはほとんどニューカマーと言って良いということです。

アングラーとしての私達は竹の竿をまず手にして、後に複合繊維の竿が世界中の釣人に紹介されましたが、トゥ-ハンドロッドの歴史においては、まずは英国のアングラーに恩恵がもたらされました。

北米では、トゥ-ハンドロッドに精通し始めたのは、パシフィックサーモンとスティールヘッドを追いかける西海岸の釣人達でした。この初期に、トゥ-ハンドロッド・テクニックを取り込み、開拓者として西海岸を駆け巡った人物の一人がマイク・キニーです。

マイクはワシントン州のスカジット水系のライフタイム・ガイドです。

トゥーハンドロッドの優れた価値を見出した第一世代として認められているだけでなく、北米で実績をもたらすべく、これらロッドにベストなラインシステムを開拓してきた人物でもあります。

マイザーのラインナップにあるMKSロッドシリーズの開発のように、“スカジット”シューティングヘッドラインは、マイクが開発に大きな影響を与えてきた機能的なラインの一例です。

マイク・キニーは、質問に答えるまでも無く、私の師匠であり、北米西海岸の多くのトゥーハンドロッド・アングラーにとっての師ともなっています。

R.B.Meiserロッドでのデザインやテーパーの設計に大きな影響を与えてきてくれたのみならず、個人として多くの釣人にフィッシングとキャスティングの両面において良き助言者であり続けています。

マイクは懐の深いインストラクターであり、彼のユニークなトゥーハンドのキャスティングとフィッシングのインストラクションは北米全体で人気を博してきています。

 

マイザーロッドデザインの始まり

私の過去30年の仕事はオレゴン州南部での住宅のデザイン建築になります。そして私の情熱はフライフィッシングにも向けられてきました。

かれこれ20年ロッドビルディングに携わり、初めは趣味として、そして後にプロとして建築家の仕事と共に10年を過ごしています。

自分がデザインした初期のフライロッドシリーズはショート・トゥ-ハンドロッドのファミリーで、北米のスペイコミュニティでは「スウィッチロッド」として知られています。このスウィッチロッドのコンセプトは約10年程前に考え、開発されてきました。

スウィッチロッドの開発の背景にある大前提のコンセプトは2つの役割をロッドを求めた釣人のためのものでした。それはシングルハンドのダブルホールデリバリーと、ショート・トゥ-ハンドロッドとしてミニマムのチカラで飛距離を最大化しようというロッドの開発でした。

何人かの地元の釣人は私のショップに尋ねてきて、アンカーを打ったスペイのデリバリーからオーバーへッドに簡単に切り替えることができて、そして状況によってシングルハンドの扱いもできるショート・トゥ-ハンドロッドをデザインできないかというのです。

このときがスウィッチロッドの始まった時期でした。

初期の多くのスウィッチロッドユーザーはシングルハンドのダブルホールデリバリーを終日行うには難しい、体力的問題を抱えていました。彼らはロングタイムのフライフィッシャーでしたが、肘や手首や肩の負傷に悩まされていて、もはやシングルハンドでのダブルホールがつらい状態でした。そんなでしたから、彼らはかつては投げられた飛距離をあきらめ、場合によりフライキャスティングを全くあきらめなければいけないくらいの人もいたのです。

そこで、フィジカルに痛みを伴わず、体力的に許容される最後の選択となる道具を探していたのです。

キャストの負荷を1本の腕に掛けるのではなく、上半身全体に拡散させることができるスウィッチロッドは、こういった釣人にとっても理想の道具として認知されるようになりました。

このロッドの開発に当たって、理想とするブランクの長さは次第に10'6"になってゆき、アクションはファスト~エキストラファストのティップアクションになって行きました。ロッドはかなりファストリカバリーになったのですが、多様なキャスティングのためにはプログレッシブな曲線と、フルラインのローディングの際にはそれがクリップの中に感じることができるアクションが要求されました。

全てのスウィッチロッドはとても軽量で、なおかつハイ~インターミディエイトモデュラスのマテリアルをブレンドすることで耐久性に富んだデザインに仕上がっています。

グリップは通常のトゥ-ハンドロッドと同じ配置で、若干短めにし、アッパーグリップを10.5”-11.0”、ロウワーグリップを3.50”-3.75”にしています。

このブランクテーパー、長さ、そしてグリップのコンビネーションによってターゲット・ゴールを達成するようデザインされているのがスウィッチロッドです。50-80フィートのトゥ-ハンドロッド・スペイデリバリーを可能にし、またトゥ-ハンドのオーバーヘッドデリバリーで100フィート以上のキャスティングさえフレンドリーに実現させることが、全てはたった10.6フィートで数オンスのロッドによって可能になったのです。

以来、私達は誇張無しに何百ものスウィッチロッドを必要とする人々にビルドしてきています。

時が経つにつれて、スウィッチロッドのコンセプトはフィジカルに良いことで受け入れるアングラーのみならず、健康体で且つ経験豊富なアングラーによってもそのコンセプトのロジックが認知され、評価されてきています。

スウィッチロッドのコンセプトはいまやショート・トゥ-ハンドロッドとして定義され、認知が広がり、多くのメジャーなフライロッドメーカーが同じコンセプトで開発したロッドをラインナップに加えるようになってきています。

 

コンセプト-Two Handed Rod

私たちのショップは、スウィッチロッド・コンセプトの着想と支持を元にして40種類以上のトゥーハンドロッド・ブランクのテーパーをデザインしてきました。

私たちは明解に2つの特異なテーパーを持ったスペイロッド・ファミリーをデザインしています。ハイランダーとMKSがそれですが、両ファミリー合わせて10’6”#3/4から16’6”#10/11のバリエーションがあります。

スウィッチロッドの開発コンセプトの背後には基本となる前提条件あり、それが私たちのすべてのトゥーハンドロッドに受け継がれています。

私たちの目指すゴールは(それはいつも私たちにとってチャレンジングですが)、要求されるディスタンスを最大限可能にし、さまざまなラインシステムを効果的にデリバリーし、すべてがミニマムなエネルギーで行われるような、キャスターフレンドリーなデザインです。

究極的に言えば、キャスターによってではなく、ロッドが全てをこなす、そんなロッド製作を目指してます。私たちがトゥーハンドロッドの開発にあたって、いつも努力しているルールはまさにこれで、成功を収めてきた多くのロッドデザイナーたちが追求してきた共通のルールだと思いますよ。

 

Feather Inlayについて

トゥーハンドロッドの究極の、何よりも優先されるべきデザイン目標は効果的なパフォーマンスを示すことであると私も感じるところです。にもかかわらず、見栄えのするロッドを製作することもまた、間違いなく大切であると考えています。

フェザーインレイをロッドデザインに加えたのはもう何年も前になります。そうした理由は、アートの手段としてフライタイヤーには常識であったフェザーなら、ロッドの一つの外観に取り入れれば喜んで受け入れられると思ったからでした。

私たちは、フライタイヤーとしてタイイングにフェザーを用いますし、ロッドのインレイとしてフェザーの選択は本質的に多くのフライフィッシャーにとても満足されるものだと思うわけです。

そしてそれは、私のクライアントのためにユニークなロッドをクリエイトするためのアートの手段・媒体でもあります。

世界的にも知られたタイヤー達にもつかわれている美しいフェザーについは、www.siskiyouaviary.comへ行ってみてください。ここは私の友人がやっているショップで、フェザーマーチャントのケイト・デビッドソンのウェブサイトです。

 

ターゲット達

私達トゥーハンドロッド・アングラーは皆好みのターゲットフィッシュがあるもので、そして多くはアトランティックサーモンやスティールヘッドをトップにランクするでしょう。最近では沿岸部の釣人達は、アトランティックサーモンやスティールヘッドだけでなく、降海したトラウト、チャー、そして全てのパシフィックサーモンもトゥーハンドロッドで楽しむようになってきました。

私にとってはこれら全ての魚がゲームフィッシュとして、またトゥーハンドロッドの対象として敬意を払うに十分な魚たちと思いますよ。

私は幸運にもパシフィックサーモンやスティールヘッドが帰ってくる豊かな自然があるエリアに住んでいて、それ故私自身のアングリングではこの素晴らしい魚達を追いかける事がほとんどになっています。

私がパシフィックサーモンやスティールヘッドなどのゲームフィッシュに選ぶロッドとラインのシステムは、川から湾まで、魚の生息環境同様に実に多様なものになってきました。

 

どうして私達はいろいろな道具がほしくなるんだろう?

スティールヘッドは太平洋岸ではおそらく最も多様性に富んだゲームフィッシュで、アラスカから北カリフォルニアのバラエティに富んだ水域で見られます。スティールヘッドは太平洋岸の魚達の中で最もグラマラス且つ最も人気がある魚であることは確実でしょう。

頂上に氷河を抱く山から沿岸のレインフォレストに急いで流れ落ちてくるような、流域の短い川から中くらいの幾百もの川に生息していて、それらは20-50マイルより短い川、あるいは100マイル程度の流れです。

また、あまり高くない沿岸部の山を水源に、のどかな田舎をゆっくりと流れ、ファームの間をゆっくりと蛇行しながら何マイルかを流れる短い川も多数あり、そこにもスティールヘッドは帰ってきます。

そしてスティールヘッドは、山脈や谷を抜けて何百マイルも流れるような雄大な川にも見られます。多くの西海岸の大河川はカナダとアメリカを横断し、砂漠の谷、延々と続く平地、美しく威厳に満ちた、両岸高い岩壁のゴルジュを縫って流れています。

これら多様な川にはサマーランとウィンターランの2種類のスティールヘッドが帰ってきますが、ウィンターランだけの川もあります。産卵を控えたアダルトフィッシュのサイズは3-30ポンド以上まで幅があり、流域それぞれにサイズにばらつきがあるものです。サマーラン・スティールヘッドは4月から12月に見られ、多くの場合、フライロッドでは夏から秋にかけてのクリアなローウォータでの釣りになります。

ウィンターラン・スティールヘッドはわずか2、3ヶ月川に留まり、川は多くの場合ハイウォータで、濁りを伴います。ウィンターランは厳しい水の状態からも、フライロッドでは非常にチャレンジングになります。

多様な環境やコンディションにある様々な川で釣りをするために、アングラーはこれまた多種多様なロッド、ライン、フライを効果的に組み合わせて、スティールヘッドを追い求めるようになってきました。

ある川ではローウォータコンディションでフローティングラインによるスケーティング・ドライフライを用い、同じ川がハイウォータになって、深場に付いている魚を狙うとなるとヘビーシンクティップのシューティングヘッドを使います。そんないろいろな状況にベストマッチする道具を選ぶことが重要といえるわけです。

そしてそれ故に、私達はスティールヘッド・フィッシングのために幾種類もの長さのロッドやラインシステム、そしてフライを用意することになるのです。

 

幅広く楽しむ。ライトウェイトの可能性

いままで話に出たほとんどの川では、季節に応じてサーモンやトラウトも同じく姿を見せ、しばしば流れの中でスティールヘッドとともに見かけることができます。それゆえスティールヘッド・フィッシングと同じく、サーモンやトラウトにも多様な道具立てが必要になってきます。スティールヘッドが回遊する川には、同じくチヌーク、コーホ、ソックアイ、ピンク、そしてチャムといったパシフィックサーモンが帰ってくるものです。そしてその全ての魚にトゥーハンドロッドが威力を発揮し、成功をもたらすことと思いますよ。そしてまた大型のトラウトに対しても、沿岸部、山間部問わず短めのライトウェイト・トゥーハンドロッドが活躍しています。大型のレインボウやブラウン、そしてブルトラウトやドリーバーデンといったチャーを釣るのにライトウェイト・トゥーハンドロッドは魅力的なスポーツを演出するに違いありません。