Meiser MKS 13'6"#8/9 Performance Note

もし1本で旅するなら。

釣りの現場というのはさまざまで、その水にあわせて釣りができるとより納得感が得られることと思う。だからさまざまなスペックの道具が必要になるのだと多くの人が言う。けれど、結局現場で手にできるロッドは1本。そういうことなのだ。

 

あるときマイザー本人に尋ねた。

「今年はBCに行くときに何を持っていくの?」

「BCに行くときはいつも大体4本」といって下記の竿が出てきた。

11'0" 4 pc 8/9 Highlander Switch Rod

13'6" 7/8 MKS

14'0" 8 wt S rod Highlander

14'0" 9/10 MKS

そして追記して言うことに「けれどもし1本で行くなら13'6"8/9 MKSで行く」と。

納得。確かに上記の4本は相当の状況をカバーしてしまうだろう。けれど1本だったらというのも実験的精神にとんだコメントである。13'6"という長さがオールパーパスと感じるのは実は比較的小規模の川でも使いようがあり、またどこで使っても大げさなことはなく、そしてシングルでは困難なTWO HAND RODのキャスティングディスタンスをカバーするのにも十分だからなんだと思う。釣り味をもっと考えると7/8でいいのだが、風も吹いたりヘビーシンクティップを使わなければとなると8/9がより安心なのは間違いない。ミニマリスト志向として選択は決して間違えてなかった。そう思いたいです。

Skeena Spey Fishing Meiser MKS

このスペックで私はハイランダーではなくてMKSを選んでいる。あまり「投げてるぜ!」というようなキャスティングスタイルは好まないし、フライキャスティングはシングルでもスペイでも自然体が一番と思っているために迷わず、MKSである。

MKSのキャスティングパフォーマンスは他とちょっと違う。セージのトラッドに近いテーパーデザインで、マーケットのほとんどの竿が持つプログレッシブテーパーのデザインとはキャスティングフィールもパワーゾーンも違うリグレッシブテーパー。使えば使うほどにマイザー氏自身が言っていたキャスティングスタイルの違い「MKSはコンパクト、ハイランダーはよりアグレッシブ」というのが分かってくる。

ラインが乗ったときのバネの利き方は格別である。これをトルクと表現したものかどうか分からないけれど、胴が良く曲がるへなちょこ竿では成し得ないショットをリラックスしたフォームから繰り出すことができる。これは素材の妙というよりテーパーの妙である。もしセージのトラディショナルシリーズのリグレッシブテーパーの良さをご存知で、それをお気に入リであれば、MKSは次の選択肢の一つに間違いなくなり得るはずだ。一方でとにかくガンガン振って飛ばしたい、ロングショットが身上という人であればMKSは全く別物、考えないほうがいい。

 

マイザーのサイトにあるように、リグレッシブテーパーでありながらプログレッシブアクションと表現されているゆえんは、やはり手元の力は累進的にロッドの先端に向けて伝わっていくデザインを維持しているからである。よりバットセクションを積極的に動かす、使うデザインになっているために、4ピースのこのロッドの各セクションでグリップに近い側から順番に緩みがちになる。自分の腕の重さ、体重が乗った力強いループは手元から先に累進的に伝わって穂先からはじき出されているのは間違いない。この感触はちょっと癖になります。

MKSが生み出すショットはラインスピードが高速であるというより、コンパクトなストロークから重たい伸びのあるループが飛行すると表現できる。ロングキャストができるのだろうけれど、どちらかというとそういう種類の竿とは違うように思うから、今風に言うとやっぱりショートヘッドのラインでキャスティング、もしくはスカジットスタイル、そしてシンクティップを扱うのに適したロッドである。

ティップセクションがしっかりしていて太いというところがセージとトラッドとの大きな違い。セージの繊細な感じがそれはそれですばらしく味がある。ただMKSはマイク・キニーが現場で起こるニーズに合わせてデザインしており、スティールヘッディングではシンクティップワークの重要性が増しているためにこういうデザインに仕上げている。これが頼りになる。ロッドの先端が非力だとロッドを切り返すスペイキャスティングではティップ部分が沈んでいることによって持ち上げた時に穂先が沈む。ティップの非力が仕事にディスアドバンテージになる。MKSはこういうことに対してもテーパーにしっかり“デザイン”を入れているわけである。

魚が掛かったときにディスプレイされる曲線を確認すると、ティップが魚に対して入っていくということがなく、手元に魚の引きが入ってくるようにバットから1,2番のセクションが撓む。だからだろうか、竿を垂直に立てると穂先が効かず、曲がらないのでものすごく強い竿のように思える。大きく空中に返そうとするように力がかかるようで、正直これだとファイトの最中に重さをうまく乗せ続けるのが難しく感じた。だからファイトは斜め45度よりも立てずに行い、竿の曲がりを確認して楽しみつつ、のほうが安全に思えた。

(Meiserの日本語版簡易カタログはコチラのリンクで)

 

One by One Checking

Meiser MKS Spey Rod Steelhead

このページはMKSのキャスティングノートである。購入に際してもらったアドバイスを元に、ここに忘れずに列記しておくことにした。なにせ職業フライマンではないし、業界人でもない。フライの釣リを身近にできる生活圏にも住んでいないし、もともとのセンスもたかが知れている。単なるスティールヘッドに狂ったサラリーマン釣師だから体も頭も忘れることおびただしいのである。近所のドブ川で練習する度に一からやり直しで、30分で一つ思い出し、また30分たって「これも注意しなきゃ」という繰り返しになる。

そこで。とにかく竿を手にすると投げたい気持ち一心で、わずかに体が覚えていることに頼りきりになってしまう。体が覚えるほどキャスティングに執着できる時間はないワケだから、せめてここにメモを残そうということになった。ひょっとして助けになるかもしれないと思いつつ。下記が「MKS・スペイキャスティング・心得」である。

 

Technical Issues (Double Spey & Circle Spey)

ラインのテンションを感じつつ、はじめからゆっくりと
腕は最初から最後まで縮こまらず、かといって伸びきらず
ラインの保持は上手のほうで、上手はロッドがねじれないよう軌道のコントロールに集中すべし
上手の軌道は自分の正面を過ぎたあたりから45度の角度で竿先を立ち上げてゆく。決して先端を低く走らせるようにしてはダメ
慌てず体の横にラインを誘導しつつ後方45度の位置まで竿先を誘導し
竿にはラインの重さを乗せつづけ、決してハネてはいけない
Dループを作り終わったらとき、フローティングラインは全て空中に。シンクティップの頭が少し水から出ている状態をときに目視して確認すべし
その際ロッドは後ろ45度の位置にあり、あるいはそれ以下に
上手は耳から頭の天辺にあり、体からあまり離れていないように
フォワードのスタートは下手からスタートするかのように
ここを軸とし、エンジンとして、ぶれないチカラを竿に与え
上手は耳から頭のてっぺんあたりにあって、手を添えて送り出し、決してエネルギーが下の角度に加わらないように
下手は自分の中心に納め、ちょうどヘソ辺りに納め
穂先を12時の位置で止めるがごとくロッドをブロックする

 

Phycologycal Issues

スローダウン
リラックス
肩を落として、上体の力を抜いて(こうすればラインの負荷を自然に手元に感じるはず)
投げ込む水面の1点に気を取られることなく
一点を凝視せず、ラインが飛行する空中全体を見て
ロッドから放つエネルギーの方向全体を見て
後方45度までロッドを誘導する際はそれより深い位置も意識するくらいにし
そこから振るというよりは自分の腕、そして体重をロッド全体にかけるかのごとく
そのとき竿は体から伸びる延長のように
フォワードのスタートは下手からスタートを意識し(実際は同時だが決して上手から振り込まないように)
目の高さよりも上、空中に向けて放るように
エネルギーは水面に平行というよりは水面から離れていく方向に放つ