海用の小さいフライリール

全般小さいリールに惹かれています。トラウト用だけでなく、海用のリールでも。ハードファイトが要求されうる海の釣りで、どうしてこんなサイズを作ったのだろうとも思えるようなサイズが気になります。気がつけば数台所有することになるくらいですから、やや病気にかかりつつある、かもしれません。

スペイフィッシングに熱があった時はハーディのライトウェイトシリーズで最大径のセントアンドリューやサンビーム9/10、マーキス#3など、大口径のリールを粋に感じて大物狙い気分よろしく愛用していましたが、今それらはすべて他の方々の手に渡っています。

中高生の頃に釣り雑誌やカタログで見た憧れの道具達、社会人初期の頃に高価で手が出せないモノたちの記憶が径の小さいリールに向かわせるのかもしれません。スティールヘッドが河に戻ってきて幼魚の記憶から川虫に反応するのと同じでしょうか?

今釣りの道具は中古市場が広がって、20年30年前のものを比較的手軽に探すことができて手に入れることができるせいで、ポツポツとそれらが揃うようになりました。そしてクロダイやシーバスをやる機会を得て、ついに今まで少しづつ貯めてきたフィンノア(フィンノール)#1、アイランダーFR1が現場に出て行くようになりました。釣りに効率を追求するとフライフィッシングである必要がだんだんなくなってしまうようで、そんなことからシューティングヘッドのような仕掛けもスペイフィッシングもあまりしなくなってしまいましたし、道具全般退化傾向で、小口径のリールが集まるのはその一つの表れかもしれません。 

フィンノア フィンノール アイランダー フライリール

昔のフライフィッシングの挿絵や写真で見かけるロッドとリールのバランスはリールが小さい傾向にあったようで、そこになんか萌えるような感覚があります。(左は1992年スポーツアングラー誌に出ていたフリップ・パロットの写真です。一番小さいアイランダーを使っていてカッコイイ!)

機能面でより優れたラージアーバーが前面に押し出されている現代はお化けのような大口径で骸骨のように肉抜きされたリールがロッドに取り付けられるのが普通ですが、軽くて優れた性能を発揮することは想像できるのですが、見た目のバランスに惹かれないのです。海では恐ろしくラインが引き出される釣りを経験しておらず、クロダイやシーバスはリールファイトにはならない魚ですから、これら小口径のリールで全く問題ないですよね!?

手持ちのフィンノア(フィンノール)達は1970年代後期に製造されはじめたようで、ムクの鋼材から削り出され、ズシリとしています。頭にでも当たったら大怪我するような凶器の重みがあり、正直今では釣りをするにあたってプラクティカルとは言い難いです。コルクのディスクブレーキは現代でも通用する機構と思いますが、やはり古臭さも感じる使い心地。ですがこのこじんまりとした金の塊をロッドにつけてぶら下げていると愛着しないではいられないのです。#1の外径は7.5cmほどで、ハーディのLRHライトウェイトよりも小さい径になります。(フィンノアでは1960年代に登場したウェディングケーキが最初期モデルとして有名ですが、こちらは値段が張るので購入できずにいます。今持っている4つの海用リールを合わせてもウェディングケーキの価格には届きません。。。)

 

アイランダーでのフライリールの歴史は1991年頃に始まったようです。この最小モデルは外径が8.2cmほどで、これがようやくLRHライトウェイトと同じくらいで、メジャーなソルトウォーター用フライリールの中ではかなり小さめです。もう一段小さくあってほしいと思いつつ、6、7、8番のラインならこのFR1で問題なく使っています。逆転音も愛らしく、フィンノアと同じくコルクパッドのドラグながら、その10年後に登場したこちらはよりスムーズで、抜群の使用感です。以前に使っていたエーベルよりも気にいる要素に溢れています。FR1は1990年代最後の方で製造が終わり、FR2以上が生産されていましたが、2020年現在はラージアーバーのみのラインナップになっているようです。このクラスで小口径の需要は限られ、レギュラーアーバーの性能はラージアーバーに劣るということでしょうか。

フィンノア フィンノール アイランダー フライリール

小口径リールで唯一気になるのは糸の巻きグセです。細い軸に巻かれていると、足元に引き出したラインはクルクルとコイル状になりがちで、キャストしてシュートするときはトラブルの元になってしまいます。ここはどうしようもない逆アドバンテージです。それでも手のひらにズシリと乗る何十年も前に作られたこのリールを使わない理由にはならず、可愛くて仕方がないのです。

 

バンブーロッドの本をいくつか読んだ中にはかつてのビルダーが新素材の竿との競争に苦戦するビジネスの中で、さらにスピニングの釣りを嫌悪するようなコメントがあったと思いますが、それはその効率の良さに向けられていました。釣りをしつつ、その行為はまさに釣れることが肝要なんですが、釣りの成果のために追求してゆくと「そんなにしてまで釣らなければいけないのか」という矛盾的な考えが生じます。何十年も前にフライで釣りをする仲間たちの中でもこれはよく聞かれたことでした。釣れればなんでもいいわけじゃない。そう聞いても若かりし自分は釣ってなんぼだろうとも思っていたので、目の前に魚がいるとわかれば、様々をフライの道具でやってみました。そしてある時、思ったように魚が釣れるかのような錯覚が続いた時、釣ることに効率を求め過ぎてゆくことに自分のフライフィッシングが ”らしさ” から遠ざかっているのではないかと考えたのです。フライフィッシングに憧れたのはキャスティングの美しいループであり、高く伸びるバックキャストであり、シンプルな道具達です。これをやろう、これをやりたいと思わせるものがそこにはありました。昔ながらの小さい径のリールたちには何か濃縮された美しさがあるとも感じられ、くるくると忙しく巻き取る作業は滑稽かもしれないと思いつつ、または魚を釣りに来ているというのにラインは巻きグセで絡みやすくなったり、巻き取りでかかった魚の動きについて行けないことになったり、獲物を取り逃がす可能性が比較的生まれやすいにもかかわらず、自分が思う美しいバランスについつい惹かれていってしまうのです。ソルトウォーターでの小口径のフライリール、いかがでしょうか?

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